2025年9月26日金曜日

●金曜日の川柳〔榎本聰夢〕樋口由紀子



樋口由紀子





雷のお詫びのような虹の橋

榎本聰夢

雷が鳴ったら急いで家の中に入り、雷が鳴り終わったら、家々からは人が出てきて、よう光りましたな、これで少しは涼しくなりますなと口々に言いあった。さっきまで驚かせて、すいませんというように虹が出ている。それまでの雷の恐怖が吹っ飛んで、その美しさに見惚れた。のんびりとした、人柄がしみじみとでる、昭和の川柳である。よくないことが起こっても煽るのではなく、おだやかに済ませる。

しかし、令和の現在はもう、そんな悠長なことはいっておられなくなった。「お詫びのような」では済まないような半端ではない災害が次々と襲ってくる。猛暑、落雷、竜巻、地震、豪雨、線状降水帯、豪雪、突風と容赦がない。一瞬にして生活がひっくり返され、人間社会が叩きのめされる。暗い穴に吸い込まれていきそうである。

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