
樋口由紀子
どうしても容器の口が広すぎる
松永千秋(まつなが・ちあき)1949~
容器の口が狭すぎて、モノが入らないので困ったというのはよくあることだが、ここでは「広すぎる」。容器自体が大きいのではなく、「容器の口が広すぎる」。大は小を兼ねるのはすべてもものに通じない。
すぐの思いつくのは壺や花瓶である。大きな壺のほとんどはその大きさに比例して口も広い。これほど花を活けるのに不都合なことはない。花を多く活けるか、あるいは叉木をしなければ、花は倒れてしまう。「あちらを立てればこちらが立たず」「とかくこの世は住みにくい」。「どうしても」を「どうにかして」、辻褄を合わせるのが、生活していくということだろう。『What's』第9号(2025年刊)収録。
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