
西原天気
どうしよう赤信号が幻に 千春
《赤信号が幻に》なった瞬間からの、この人のこの状態から推測するに、信号機のサインは、なんらかの標/導(しるべ)であったにちがいない(信号機側からすると、それは本懐だ)。
ここで、読者たる私が、この人に向かって告げることは、もう決まっている。
赤が幻になった以上、そこには青しかない。否、青も黄色もない。どうしようもないくりあ、どうにでもしていい、何をしようがかまわない、ということだと思いますよ、はい。
世界ぜんぶが、この人の意のままになる。この人のものになる。その一瞬手前の「どうしよう」。一歩手前の不安や逡巡。それは、歩き出す、駆け出す前の足踏みなのだと思います。
掲句は千春句集『こころ』(2024年4月15日/港の人)より。
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