2012年4月23日月曜日

●月曜日の一句〔藤本美和子〕 相子智恵


相子智恵








天空は音なかりけり山桜  藤本美和子

句集『藤本美和子句集』(2012.3/ふらんす堂)より。

句集『天空』を読んで以来、ずっと愛唱してきた句だ。今回、また新たな装いの句集でこの句に出合ったが、やはり惹かれる。

しんと無音の大空と、瑞々しい新葉とともに咲く清潔な白い山桜。

ただそれだけの世界だ。が、この句を唱えるだけで、自分が何か大きくてまばゆい光に包まれているような気持ちがしてくる。それでいて、万物が無音のうちに移り変わるような、大きな寂しさにも同時に襲われる。

ここまで書いてきて、なんだか主観的過ぎて、うまく鑑賞できていないことに気づく……すみません。

ただ、俳句のエッセンスを搾った一滴がここにあるような、ここには俳句にしか到達しえない世界があるような気が、個人的にはしているのである。

ただただ、好きな句である。

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