2013年2月4日月曜日

●月曜日の一句〔小滝徹矢〕 相子智恵

 
相子智恵







山焼くや人にプロメテウスの業  小滝徹矢

句集『祗園囃子』(2012.7 本阿弥書店)より。

ギリシア神話でプロメテウスは、土塊から人間を造り、技術を授けた神。ゼウスから火を盗んで人間に与えたために怒りを買い、コーカサスの岩山で生きながらにして鷲に肝臓を食われ続けるという苦役を与えられる。

〈山焼く〉は、早春の山の枯木と枯草を焼き払う季語。飼草や山菜の発育を促し、害虫を駆除するために焼き払うのである。

天上から火を盗んで人間に与えたプロメテウスと、日本の伝統的な山焼きが取り合わされている。火を与えられた人間には〈プロメテウスの業〉もまた、与えられたのだという。技術と火を手に入れ、自分の利益のために野山を焼き払うことができるようになった人間たちに、業の深さを見ているのだ。山焼きの句としてハッとさせられる視点である。今はこれに加えて「第二のプロメテウスの火」といわれる原子力のことも、思わずにはいられない。 


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