【俳誌拝読】
『鏡』第8号(2013年4月1日)
野口 裕
各人一句。気が向けばコメントを。
冬天やひとこと欄に文字はなし 東直子
「文字はなし」と書けば、文字が溢れかえる不思議さをあらためて思う。否定形に似合っているのは冬。
猫の子を筆であやして大人めく 佐藤文香
「大人めく」と書いて、モラトリアムの気分か。猫の子とネオテニーの対比。
うすらひに触れて指先すこし反る 羽田野令
的確な描写と見えて、「反る」という行為の秘める含意もまた、高柳重信の「身をそらす虹の」うんぬんを参照したくなる。
朝寒の駅大勢のわれ急ぐ 遠山陽子
雪をんなしづくきらきらしてゐたる 谷雅子
春の夜の商談怒号に終るとや 大上朝美
くちびるのわづかなる揺れ雪催 笹木くろえ
海賊の仲間になれる宝船 寺澤一雄
初夢のジャックスパロウ女からビンタ。
川べりに自転車並ぶあゆの風 村井康司
暖房の風に頁の揺れている 越智友亮
ガードレールを横ずさりして寒鴉 中村裕
爪立ちて探す本あり日脚伸ぶ 森宮保子
地球儀をつぶすおつぱい百千鳥 大木孝子
アマゾネスの裔か。
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2013年5月7日火曜日
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