2015年6月5日金曜日

●金曜日の川柳〔合田静江〕樋口由紀子



樋口由紀子






忘恩やすらりと抜ける鮎の骨

合田静江 (ごうだ・しずえ)

鮎の美味しい季節になった。鮎は独特の苦味と淡白な身で好物だが、人前ではあまり食べたくない。鮎を上手に食べる人は骨をすっーと抜いて、品よく食べる。箸の使い方の下手な私はそれがうまくできない。

作者は上手に鮎を食べることができる人なのだろう。しかし、鮎の骨ならすらりと抜くことができるのに、すらりと抜けず、ずっとひきづっているものがある。鮎は清流に棲み、柳の若葉に似たしなやかな姿をしていて、清涼な香を漂わせ、色艶がある。掲句を読んで、忘恩と重なり合うと思った。「忘恩や」は忘恩とはなんなのか、そうすべきなのか、という作者の思いの表われのような気がする。「川柳展望」40号(1985年刊)収録。

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