鳥の嵐
木岡さい
三日月を古い駅舎で手に入れた。
フランスのロックバンド「OISEAUX-TEMPÊTE」 (鳥の嵐)の公演に出かけた。会場は人口1900人あまりの小さな村モーベックの旧駅舎。長いあいだ廃駅になっていた建物に約20年前、文化振興協会がふたたび息を吹きこんだ。いまでは年中さまざまなイベントが行われている。
「鳥の嵐」でギターやキーボード、サックスを演奏するのはフレデリック・オーバーラント。彼を知ったきっかけは詩人のクリストフ・マノンで、2人のパフォーマンスをよく最前列で鑑賞した。オーバーラントの演奏に合わせマノンが詠う。例えばこんな詩を。
なにを今さらと愛。 おしむすべ分からず
に。 先のばしするお終い。 焦がしたあの
時めき。 なつかしくて切ない。 ここまで
かけた愛。 閉じこめろ永遠に。 しまつて
その心に。 のこりの毒がまわり。 ゆっくり
とてもゆっくり。 ぼくらを。 殺す。
多才なオーバーラントは写真家でもある。わたしが抱きしめるレコードのジャケットを指さして言った。
「その三日月とったの俺だよ」
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