相子智恵
おそらくは下つ端ならむ風邪の神 大島雄作
句集『一滴』(青磁社 2019.12)所載
掲句、「八百万の神の中で〈風邪の神〉は〈下つ端〉なのだろう」とも読めるし、「自分が今引いている風邪は、〈風邪の神〉の中でも〈下つ端〉の神様が来て引き起こしているのだろう」とも読むことができる。前者の読みだと傍観者めいているが、後者だとより当事者っぽくなる。
総合すると、「八百万の神の中の〈下つ端〉の〈風邪の神〉の中でも、さらに〈下つ端〉の神様が自分の風邪を引かせている」というような感じがしてくるので面白い。やはり、自分が風邪を引いた当事者であってこその俳味なのだ。
今話題の、得体の知れぬ新型で強い〈風邪の神〉などではなく、「なんだか今日一日、風邪気味で調子が出ない……」という程度の軽い風邪。〈下つ端〉とはよく言ったもので、疎ましさと親しみやすさがないまぜになって、何とも愛嬌のある〈風邪の神〉である。
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