2020年5月15日金曜日

●金曜日の川柳〔前田雀郎〕樋口由紀子



樋口由紀子






退屈な猫に出て行くとこがあり

前田雀郎 (まえだ・じゃくろう) 1897~1960

コロナ自粛で、ゴールデンウイークはどこへも行かなかった。こんなことははじめてである。どこにも行けないので本の整理をしていたら、こんな句を見つけた。掲句は半世紀以上前に作られた川柳である。

作者も猫も退屈していた。しかし、猫には行くところがあるようで、悠々と自分の前を通り過ぎて、外に出て行った。で、自分一人が残された。飼い猫が外へ出てゆくうしろ姿は誰もが目にすることで、たったそれだけの、とりたてていうほどのことではない、いつもの日常の一場面である。それを自分はあたかもどこへも行くところがないかのようにつぶやいている。自嘲気味に、軽く一句にし、何やらの余韻を残す。そのように見てしまう作者が情けなくもあり、おかしくもある。

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