2011年11月11日金曜日

●金曜日の川柳 樋口由紀子


樋口由紀子
  







後手で夕焼けを閉めポルノでも見にゆこ


奥室數市 (おくむろ・かずいち) 1923~1986

夕焼けは鮮やかである。夕焼けを直視できないやましさがあったのだろうか。「後手」がなんともやるせない。しかし、さらにやましさとやるせなさを加速させるように「ポルノ」を見にゆこうとする。「夕焼け」という美的なものと「ポルノ」という通俗的なものの並列によって屈折した男の心情を出している。

數市氏とは一度だけ川柳大会でお会いしたことがある。大正生まれの人にしては大柄で、といっても太っているのではなく骨格が大きく、手もびっくりするほど大きかった。聞けば、元力士さんだったらしく、わざわざ四股を踏んで見せてくださった。やさしい人柄がにじみ出ていて、このやさしいが力士寿命を短くしたのかなと思った。〈胃の中で暮しの蝙蝠傘押しひろがり〉

『奥室數市集』(川柳新書・第二十三集)所収。

2011年11月10日木曜日

〔今週号の表紙〕第237号 電飾

今週号の表紙〕第237号 電飾


田舎育ちの特徴。

贈り物には、手作り(手編みのセーターなど)よりも既製品(洒落た小物やブランド品)のほうがいいと思っている。

自分の部屋にカーテンではなくブラインドを付けたがる。

ネオンを見ると、ドキドキする。


私儀、すべて当てはまります。恐縮です。

(西原天気)


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2011年11月9日水曜日

●「豆の木」合宿記 2/2 近恵

「豆の木」合宿記 2/2

近 恵

※同人「豆の木」の合宿(10月末)の様子を
近恵さんにレポートしていただきました。



部屋の窓からは海じゃなくて山が見える。新幹線の熱海駅も見える。だから朝から新幹線の始発なんかも見えた。ちょっと曇っている。

こしの組長の部屋からは海から昇る朝日が見えたらしい。

昨晩3時までネットラジヲに勝手に出演し、寝たのがおよそ3時半ちょっと前。

眠い。けど6時過ぎになんとか起き出す。金曜の夜も3時間くらいしか寝てないから眠い。
ぼーっとしつつ顔を洗い化粧をし、7時の朝食へ。

ちゃんと食べる。米は少なめ。鯵のぺらぺらの干物と納豆、味噌汁、生野菜など。牛乳を飲む。9時に出句。部屋に戻って考える。

同室のぽぽにゃんと、ちょっとした家庭のことなんかも話す。


集合し、句会。朝一はやっぱり頭が冴えない。どうにもつまらない句ばっかり。

それから海にいっておさかなフェスティバルというのに行ってみる。七厘で色々と焼いて食べられるらしいが、なにせまだお腹が減っていないので諦める。

ぶらぶらと露店を物色していたら、田島氏を囲んでなにやら交渉中。講談社版のカラー図版日本大歳時記が、新年の欠けた4冊で1000円!と、こしの組長の押しでもって露店のおじさんが粘り負け。おおー、ええ買物しましたなあ。

その露店は他にも分厚い画集やなんかが積んであって、かなり興味があったのだけれど、なにしろ分厚くて大きな画集なんか持って歩くのは大変なので買うのはやめた。

秘宝館のあたりをとおり、海沿いにずーっと歩く。ええーと、スコットという有名な老舗の洋食屋さんで昼食を食べるのだ。

天気は悪くない。程よく晴れていないので、汗ばむほどでもない。海で晩秋だというのにちっとも寒くない。オイラの実家の方のこの季節の海とは大違い。さすが熱海。

洋食屋さんへは開店の五分くらい前に着いたが、入れてもらえず店の前に並ぶ。すぐ傍にその店の本店があり、開店時間が30分遅いそうなのだが、そこには行列が出来始めている。私たちはこじんまりとした旧館の方に入るのだ。

店の中は古いけれども清潔にしてあって、テーブルクロスも刺繍をしたものにビニールが重なっている。お料理は美味しかった。ビーフシチュー、ミートコロッケ、牡蠣フライ、チキンステーキ、えーっと貝の入れ物に入ったチキングラタン。どれもちゃんと美味しい。

幸せな気分で店を出て、宿に戻り荷物を持ってバス乗り場のホテルに移動。

途中、試食品につかまるご婦人方多数。

ホテルについて、少し時間があったからぶらっと散歩に出る。ちょっと行くと川沿いに遊歩道が海の近くまで続いている。両脇にはスナックやら小料理屋やら、小さな店が軒を連ねる小路がいくつか。ああ、昔の繁華街なんだ。

泊まったホテルは駅の近くだったけど、昔は海に近い方がメインの温泉街だったのだなというのがよくわかる。昼の2時前だというのに、カラオケスナックみたいなところから歌が聞こえてきたりして。なんとも香ばしい感じ。

雨がぱらついてきた。ほどなくバスが到着し、一行は上野へ向かう。
…眠くて起きていられない。席題が出ているのだが、まったく考えられない。

小田原で鈴廣の巨大なかまぼこの館が風祭の駅から直通でいけるようなのが出来ていた。いつの間に。

いやあ、館内練物三昧。あれもこれも欲しくなる。これはまた来たい!素敵なところだ。

うとうとしつつ、俳句を作り、上野のカラオケボックスに入って最後の句会。

それから数曲歌って解散。

か、体を休めねば…。とか思いつつ、実は家に帰ったら、友人から大量の海産物が、ダンナの実家から大量の野菜が届いているのである。だからお土産は鈴廣の竹輪が一本だけ。

とりあえず疲れは残ってしまったけれど、合宿は楽しかった。

もう3時間とか2時間の睡眠ではもたないのだ。老化ちう現実…。

ま、いっか。もう47歳だもんね。20代のときと同じ様に遊ぼうと思ったって、そんなふうにはできないよね。お肌にも良くないし。

あ、でも温泉につかったので、とりあえずお肌はすべっとしていたのでありました。

2日目は30句。2日間で80句ばかり作ったけれど、目標の100句にはとどかなんだ。そりゃーあんなに眠くっちゃあしょうがないよね。

でも楽しかったし美味しかったからヨシ!とするのであります。

( 了 )

2011年11月8日火曜日

●「豆の木」合宿記 1/2 近恵

「豆の木」合宿記 1/2

近 恵

※同人「豆の木」の合宿(10月末)の様子を
近恵さんにレポートしていただきます。


総勢10名。はるばるNYから参加のぽぽにゃんもいる。お菓子係のイチローさんも初参加。

今年も集合場所をきちっと確認せずに行ってしまうが、駅で組長とうさぴょんに遭遇したので難なく集合場所にたどり着く。そうか、駅前集合じゃなかったんだ。どうりで誰もいないと思ったよ。

ことしはおおるりじゃなく伊東園グループ。バスが広々としてるよー。

豆の木賞の選評を読みつつバスは進む。ベイブリッジを渡り、川崎の工業地帯を通り、結構スムーズに行く。今年も矢羽野鬼軍曹が采配をふるい、ほどなく題詠スタート。基本とにかく駄句しかできないので、だばだばと作る。詠み捨てて詠み捨てて詠み捨てていく…とかいってきっちり短冊に書いて出句してるわけだが。それでもスタートしたばかりのは、自分で読んでもダメダメすぎる。

11時にドライブインで1時間の休憩。そう、高速道路じゃないからPAじゃないのねん。バスが止まったドライブインと道路を挟んで向かい側の海鮮料理屋へ入る。海が目の前にどばばーんと広がる座敷で、今朝捌いたばっかりなのでお勧めですという戻り鰹のたたき定食を食べる。おおおおー、この鰹は美味い!大きい鰹だったらしい。もう今回の旅はこれでいいや…とか思うほど。これには舌の肥えた朝様も満足の様子。カメラマンのヨン様はここで一発目の集合写真を撮る。

バスはだいたい予定通り熱海へ到着。熱海館ちうホテルのロビーのラウンジで清記する。ええーとA3で3枚。5時15分の夕食まで近所を酒屋探しがてら散歩。戻ってきて作句して食事。

食事はバイキングにもかかわらずビールも飲み放題。参加が叶わなかった今年の豆の木賞受賞者の宮本佳世乃ちゃんへカンパイを捧げつつ、などどいってもカニの足が出てきたとたんに目の色を変えてカニに突進するこしの組長。カニさえ与えておけばあとはどうでもいい的な勢い。どうやらお祝よりもカニの方が重要事項らしい。ひとしきり食べて落ち着いたようである。

温泉に入って背中の流し合いをし、7時に部屋に集合。更に1枚清記し、地酒を飲みながら句会スタート。終了は12時過ぎ。1日目は50句駄句を生産してしまった。

前日3時間しか寝ていなかったのだが、句会終了後がまだあった。田島氏がインターネットラジオをやるというのだ。トリオ・ザ・レモン(とっさに今命名。昨年の豆の木賞受賞者うさぴょんと、一昨年の豆の木賞受賞者ぽぽにゃんと、来年の豆の木賞受賞予定者が一人)と今年の豆の木賞一句賞の葉月さん、ヨン様と5人で田島氏を盛り上げる。どうやらあの人もこの人も聞いていたようであるが、そんなことお構いなしにオールナイトニッポンのオープニングソングを歌って盛り上げるトリオ・ザ・レモン。

なんだかんだと俳句や豆の木賞や角川賞の話など、酔った上に半分眠りつつもがやがやと話して3時に終了。おやすみなさい。明日の朝起きられる自信が全くありません…

てな感じで1日目が終ったのであります。

(明日に続く)

2011年11月7日月曜日

●月曜日の一句〔西原天気〕 相子智恵


相子智恵








アンメルツヨコヨコ銀河から微風  西原天気

句集『けむり』(2011.10/西田書店)より。

「アンメルツヨコヨコ」という、肩こり・筋肉痛に効くスーッとする塗り薬。この商品名、よく見ると不思議な文字づらだ。

「アンメルツ」はちょっと「アンドロメダ」に似ている。「ヨコヨコ」は何かの信号みたいだし、「ワレワレハ、ウチュウジンダ」みたいな感じも、ちょっとする。

それはもちろん〈銀河から微風〉が取り合わされたことで読者にもたらされる気づきであり、こう書かれなければ、決して肩こりの薬の名前が、宇宙からの交信と結びつくことはない。心地よく楽しい言葉のワープだ。

〈糸屑をつけて昼寝を戻り来し〉〈枝豆がころり原稿用紙の目〉〈しまうまの縞すれちがふ秋の暮〉

読者をどこにも連れて行かず、とどまらせる俳句がある(もちろん良い意味で。じっくり着実な)。逆に、読者の首根っこをつかみ、急に世界の反対側に引きずり込む俳句もある(こちらも良い意味。独創的な)。それらの俳句を読むのには、集中力と体力がいる。だから、こちらが疲れているときは、少しだけ躊躇する。

『けむり』という句集がくれるのは、そのどちらでもない「小さな心のワープ」だ。赤坂見附の地下鉄入り口に入ったはずなのに、ホームに出たら永田町だった、というくらいの小さなワープ。

『けむり』の俳句は、だから、元気のないときでも読める。むしろ元気のないときに読むと、ほっと疲れが取れて、少しだけちがう場所に出られる。

それはちょっと肩が凝ったときに塗る「アンメルツヨコヨコ」に、そういえば似ていなくもない。


≫西田書店ウェブサイト