2012年3月9日金曜日
●金曜日の川柳〔大友逸星〕 樋口由紀子
樋口由紀子
眼鏡屋が死んで一・五に戻る
大友逸星 (おおとも・いっせい) 1924~2011
アイロニーは川柳の大きな武器である。そのアイロニーを上手く取り入れている。この句は眼鏡屋が死んでしまって、世の中も何もかも見えなくなって、悲しくなったという、情に訴えるパターンの川柳ではない。
眼鏡屋が死んだことは眼の方でも心得ているのだ。だから、ちゃんと視力を一・五に戻してくれる。眼鏡屋が居たから〇・五ぐらいだったのだ。人生はなんとかなるものであり、人間はなんとかして生きてきた。人はそのときの状況や器に合わすことができてしまう。眼鏡屋なんていくらでもあると野暮なことは言わないでください。
3月11日に仙台で川柳杜人社主催の大友逸星と添田星人の追悼句会がある。二人とも頑固でやさしかった。〈女の子が一人寺からついて来る〉。ついて来た女の子たちとよくけんかしていた。その女の子たちが中心になって追悼句会は開かれる。『なまけもののうた』(1990年)所収。
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