2012年5月31日木曜日

●コモエスタ三鬼31 高きより

コモエスタ三鬼 Como estas? Sanki
第31回
高きより

西原天気


映画『第三の男』(キャロル・リード監督/1949年)の観覧車のシーン。悪党ハリー・ライムは、地上をはるかに見下ろし、行き交う人を指して、「あの小さな点が動かなくなっても、それで大金が手にはいるなら、気にはならないだろう?」(大意)とうそぶく。闇で捌いているペニシリンが原因で人が死んでも、知ったことではない、というわけ。

高いところに登ると、人が虫のように小さくなる。人をひねり潰すことには罪悪感を感じても、虫なら、感じない。高所はしばしば神の視座となる。




穀象の群を天より見るごとく  三鬼(1947年)

数十センチの眼下ではあっても、三鬼の視座は「天」のものだ。

三鬼は悪党ではないが、悪党的な達観は、しばしば句に現れる。オーソン・ウェルズの演じたハリー・ライムも、三鬼も、なかなかの伊達(ダンディ)。


※承前のリンクは 貼りません。既存記事は記事下のラベル(タグ)「コモエスタ三鬼」 をクリックしてご覧くだ さい。

0 件のコメント: