2012年5月25日金曜日

●金曜日の川柳〔高橋かほる〕 樋口由紀子


樋口由紀子








大阪は轢れかけてもよい所


高橋かほる

「轢く」は自動車か電車に踏みつけられることである。なんと物騒な川柳であろうか。しかし、よくよく読むと「轢れかけても」であって「轢れても」ではない。実際に轢かれてしまっては元も子もない。そこのところはよくわかっている。それでも「よい所」はないだろうが、その一歩手前のぎりぎりの魅力を詠んでいる。確かに何事もあぶなさと紙一重の部分におもしろさが潜んでいる。同じ「ひく」でも「惹く」ならわかるが、それでは当たり前になる。

大阪にはいろんなものやめずらしいものがたくさんあり、キョロキョロとして、ついよそ見をしてしまう。道を歩いていることを忘れて見入ってしまうものがあると言いたいのだろう。作者は根っからの大阪の人で大阪を礼賛している。大阪の土地柄の一面をうまく言い当てている。〈花道は相合傘の幅に出来〉

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