2015年4月24日金曜日

●金曜日の川柳〔飯島花月〕樋口由紀子



樋口由紀子






道具屋は赤い鰯をかついで来

飯島花月 (いいじま・かげつ) 1863~1931

「赤い鰯」に首を傾げながら、新鮮の鰯だからそう言ったのだと思った。でも、それは大きな間違いで「赤い鰯」は「錆びた刀」のことだと知らせてもらった。句意がまったく違ってくる。調べてみると、「きさまたちの赤鰯で、なに、切れるものか」(滑稽本・膝栗毛)にあるように、刀の手入れが悪く、赤錆びだらけになった刀を赤鰯と皮肉を込めて呼んだそうだ。

どおりで道具屋だったのだ。古道具を背負って家々を訪ね歩き小売りしていた人が一昔前にいた。もちろん、必要なものもたくさんあっただろうが、そのなかに「赤い鰯」があった。役に立たないものをわざわざ持ってきたと、そこだけを誇張して、ユーモアを込めて、揶揄した。

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