2015年4月27日月曜日

●月曜日の一句〔広渡敬雄〕相子智恵



相子智恵






草を擦りつつ上りゆく鯉幟  広渡敬雄

『ガニメデ』63号 五〇句詠「龍太の川」(2014.4 銅林社)より

もうすぐ端午の節句。鯉幟をあちらこちらで見かけるようになった。掲句は、鯉幟を飾る瞬間を鮮やかに捉えた一句だ。滑車の付いた綱を引いてゆくと、草の上で準備した鯉幟が五月の青空へと上がってゆくのである。

〈草を擦りつつ〉で、鯉幟の布と草が擦れ合う音、鮮やかな鯉幟の色と新緑の草の色の対比、ゆっくりと静かに草を擦った後は、たちまち風をはらんで躍動するであろう鯉幟の動きの流れまで見えてくる。目にも耳にも鮮やかな句だ。

〈擦りつつ上りゆく〉と、途切れることなく一句が続いてゆくことで、グーッと鯉幟が上ってゆく様子を長回しで撮影しているかのように、その一連の流れが見えてくる。きっと大きな鯉幟なのだろう。綱を引く手の重みまで感じられてくるようだ。

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