2019年11月22日金曜日

●金曜日の川柳〔筒井祥文〕樋口由紀子



樋口由紀子






再会をしてもあなたはパーを出す

筒井祥文 (つつい・しょうぶん) 1952~2019

再会だから、以前にはなんらかの関係があり、たぶんつまらないことで仲違いして、それっきりになっていたのだろう。それがやっと会えた。それなのに、あなたは何も言わずにただ「パーを出す」。思いもよらない「パー」である。それは「さようなら」なのか、「いまさら」なのか。これほど堪えることはない。まだ嫌味を言われる方がよほどましである。男の心情がよく出ている。両人のやるせなさ、どうしようもなさが直に伝わり、その場の雰囲気が手に取るようにわかる。どうしようもない距離感を「パー」という言葉で形を与えた。

筒井祥文が亡くなって八か月が過ぎた。そういえば、最後に病室で別れたときも彼はパーを出した。有志で編んだ遺句集がもうすぐ出来上がる。筒井祥文句集『座る祥文・立つ祥文』(2019年刊)所収。

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