西原天気
※樋口由紀子さんオヤスミにつき代打。
つぶやいても叫んでもここはあぜ道 坪井政由
説明がなくてもはっきりと浮かんでしまう景色がある。読みとして適切か不適切かは別にして。
すでに稲が刈り取られた田圃が幾枚も広がり、そこにいるのはその人だけ。
つぶやきは誰にも届かず、かといって叫んでも同じ。その状態が広漠を強調する。あくまで広漠なので、水田でも稲田でもなく、刈田なのだ。すでにちょっと寒くなった時期の。
さびしいとか孤独とか、それはそうではあっても、そんなものでもない。つぶやいたり叫んだりして、なんだか可笑しい。可笑しいと言っては叱られるかもしれないが、あぜ道で何やっているんだか。
なお、技法的には、「ここは」がとても巧み。
掲句は『水脈』第67号(2024年8月)より。
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