2013年4月26日金曜日
●金曜日の川柳〔本多洋子〕樋口由紀子
樋口由紀子
三日月はガーゼを掛けてから握る
本多洋子 (ほんだ・ようこ) 1935~
先週の土曜日に石部明追悼句会が開催された。掲句は当日の兼題「握る」(柴田夕起子選)の特選句である。石部の川柳に〈棍棒の握り具合もいい卯月〉があり、そこからの出題である。
川柳は句会や大会が盛況な文芸で、事前に出された題で競吟する。川柳では入選することを「抜ける」という。集句の中で頭を一つ抜け出て、選者に抜き取らせるのだ。そのためには兼題をどれだけ飛躍させるか、それでいてどれほどのリアリティを出せるかに苦心する。
握るというといろんなものが思い浮かぶ。しかし、大概は似たようなものである。そのなかで三日月にはびっくりした。それもガーゼを掛けてからなんて。この細工で超現実が日常に引き戻された。鋭利なものや熱いもの、冷たいものを握るときに布を添えて握る。それを上手くふまえている。ヒヤッとした感触だったのだろうか。石部は「川柳で大嘘が書いてみたい」と言った。それにぴったりと当てはまる特選句である。
他に〈水仙をそれは凶器の握りかた 徳長怜子〉〈握ったらみんな糸コンニャクになる 東槇ますみ〉などが抜けていた。
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