2015年7月10日金曜日
●金曜日の川柳〔西森青雨〕樋口由紀子
樋口由紀子
かうやって寝てる頭の方が故郷
西森青雨 (にしもり・せいう) 1912~1971
心から言葉がストレートに発せられている。故郷はどこかと誰かに聞かれたのだろうか。その答えは故郷に対する思いを申し分なく表している。いつどこでどんなときでも故郷に足を向けて寝ることはない。故郷には両親がいて、先祖が眠り、私を育ててくれた山河がある。故郷から受けた愛と恩を常に忘れないでいる。「頭の方が故郷」に故郷を離れて生活している人の思いがにじみ出ていて、自己の存在を示している。
青雨には「老いたる酒徒」という連作があり、病弱であったが、酒と共に生きてきた人であったらしい。〈売る箒空撫でゆき旅の酒徒〉〈酒徒の白髪何を失くせし来し方ぞ〉〈胸の一つ言の端のこり酒徒ねむる〉〈酒徒酔うて嗅ぎ寄る犬を知らず歩く〉〈酒徒つぶやくほとけさまやどかしたまえ〉 どの酒徒にも哀感が漂う。遺句集『旅の酒徒』(1977年刊)
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