2015年7月24日金曜日
●金曜日の川柳〔高杉鬼遊〕樋口由紀子
樋口由紀子
税務署で冗談をいう出前持ち
高杉鬼遊 (たかすぎ・きゆう) 1920~2000
二十年ほど前の川柳だろう。今ではこういう場面に出くわすことはまずない。一昔前の税務署も気安く冗談が言える所ではなかったはずである。税を取られるという印象が強く、喜んでいく所ではなく、堅苦しい雰囲気が漂う。そこに第三者に聞こえるほどの声で冗談を言う出前持ちが登場した。意表をつかれ、驚くと同時にほっとさせるものがあったのだろう。たまたま見かけたことを一句にしたのだろう。
「税務署」も「出前持ち」もくっきりと意味が際立っている。一昔前は今よりもくっきりと意味の際立つ言葉がどこそこにあり、川柳にとってはありがたかった。どんな冗談を言ったのだろう。なんの出前だっただろうかと想像してみるのも楽しい。〈素うどんへ何ですかとは何ですか〉〈色を塗るだけで女が出来上がり〉 『高杉鬼遊川柳句集』(川柳塔社 2001年刊)所収。
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