2016年7月20日水曜日

●水曜日の一句〔広渡敬雄〕関悦史


関悦史









モノトーンの一塊として冷蔵庫  広渡敬雄


「モノトーン」といえば白も含まれるはずだが、言い方からして白ではなく、グレーか黒らしい。「一塊」とはいっても、モノトーンの無気味な四角い物件というよりは、洗練されたデザインの家電というおもむきの方が強いのではないか。

とはいうものの、自宅内の家電のデザインなど、すぐに見慣れて何とも思わなくなる。買い込んだばかりで、まだ埃ひとつ積もっていないのかもしれない。電気店に並べられている冷蔵庫ということはあるまい。幾つも並んでいるのでは「一塊」がきかなくなる。

見慣れた単なる道具である「冷蔵庫」を、「モノトーンの一塊」と捉えるのは異化である。

異化され、リフレッシュされた「冷蔵庫」が、この句では、デザイン性そのものが量塊として家屋内に居座っているという描かれ方をされているようだ。無気味さも、うっすらとはある。「一塊」はドアが閉じていることを示していて、中に何が入っているのかは隠されたままだし、それ以上に、「冷蔵庫」が無意味な外観に還元されているからだ。

その無気味さ、無意味さが、大量生産品のひんやりとした清潔感の中にあらわされている点がこの句の見どころだろう。いわばポップアートと「もの派」のはざまからとらえられた、現代の生活空間である。


句集『間取図』(2016.6 角川書店)所収。

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