2021年11月15日月曜日

●月曜日の一句〔櫨木優子〕相子智恵



相子智恵







かいつぶり眼くもれば潜りけり  櫨木優子

句集『忘れ水』(2021.6 ふらんす堂)所載

個人的な感じ方かもしれないが、私はかいつぶりの眼が怖い。丸いのに鋭くて、どこを見ているのか分からない感じが怖い。全身は鴨より小さくてかわいいのに、近づいてみると白目の部分の金色がピカッと光る。一点の曇りもないロボットみたいな眼光がどうも苦手である。黒目の小ささもあるのだろう。鷹や海猫の眼も怖いが、彼らの目にはもっと陰影がある。かいつぶりの眼には陰影がなく、ペタッと光っているので怖い。

さて、掲句。かいつぶりは眼が曇ったら潜るのだという。なるほど、あの鋭い眼光が曇ることもあるのだ。おなかがすいて眼がぼんやりすることもあるのかもしれない。そんな時には潜って魚を獲り、食べてまた眼光を鋭くするのだ。そう思えばかいつぶりも少しは親しみやすく思える。

アメリカ先住民の神話の中のかいつぶりは、水中に潜って陸地を作る材料を探し出す任務に挑み、他の動物や水鳥達が次々と失敗していく中、彼が最後に咥えてきた一握りの泥で、アメリカ大陸が作られたという。勇敢な鳥なのだ。やっぱりちょっと超人(超鳥?)的だ。ロボットみたいに。

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