2008年11月20日木曜日

●おんつぼ03 スリム・ハーポ 山田露結


おんつぼ03
スリム・ハーポ Slim Harpo


山田露結

おんつぼ=音楽のツボ





スリム・ハーポはブルース・シンガー/ギターリスト/ハーピストです。ローリング・ストーンズが彼の曲をカバーしていることでロック・ファンにもその名を知られています。アメリカ南部のいわゆるスワンプ系と言われる独特のユルさ(この場合、ユルさは褒め言葉です。個人的に初期ストーンズのあのユルさに最も影響を与えているのは彼とジミー・リードではないかと思っています)を持ち、ややR&B寄りでブルース・ファン以外にも比較的馴染みやすい音かもしれません。

まず、スーツ(背広)姿に「昭和のおとーさん」風眼鏡というファッションにグッときます。このままベレー帽を被れば福永耕二(俳人)です。

もっとも、名前はスリムですが体型はスリムではありません。スリムと言うべきなのは無駄を一切省いた(ブルース的に言えば贅肉をそぎ落した、俳句的に言えば省略のよく効いた)ギター・ワークでしょう。白眉はストーンズがカバーしたことで知られる「I'm a King Bee」のギター・ソロです。ギター・ソロといっても「チュイ~ン」、「チュイ~ン」、「チュイ~ン」と一弦を三回鳴らすだけなのです(しかも絶妙の間で)。これはたぶん、私が知っている中で最もシンプルなギター・ソロです。蜜蜂(Bee)の刺すイメージなのでしょうが、まさに目からウロコ、コロンブスのタマゴです。ハッキリ言って参りました(ちなみに、「刺す」ことからこの曲で蜂は性的なモチーフとして歌われています。ブルースには蜂のほかに蛇、鯰などが性的なモチーフとして登場する曲が数多くあります)。この、ギター覚えたての中学生でも簡単にコピーできそうなフレーズだけを弾いて平然としている感じが何ともタマリマセン。テクニックだけがギターじゃない、ツボを押さえるとはこういうことなのだ、ということがよーく解ります。このギター・ソロを聴く為だけに彼のCDを買っても充分に価値がある、かもしれません。

スリム度 ★★★★★
ユル度 ★★★



アルバム ブルースの巨人(7) スリム・ハーポ


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