2012年3月2日金曜日

●金曜日の川柳〔平賀胤壽〕 樋口由紀子


樋口由紀子








生きるとはにくやの骨のうずたかし


平賀胤壽 (ひらが・たねとし) 1947~

川柳には一章問答という、一句の中で問答を完結する書き方がある。この句も「生きるとは」の問いに「にくやの骨のうずたかし」と答えている。表では肉を買う人があり、裏にはうず高く積まれた骨がある。が、実際はうず高く積まれた骨を見ることはない。見えないものを描写している。

テレビで「あなたは、あなたが食べたものでできている」というコマーシャルが流れていた。人は生き物を殺して生きのびてきた。多くのものの犠牲の上に私たちの生が成り立っているのだと今更ながら思う。

平賀胤壽は根付作家である。先日、京都の清宗根付館(せいしゅうねつけかん)に行ってきた。象牙で作られた「舞天」をはじめ胤壽の作品がいくつも展示されている。どれも精緻で美しく、見ているだけでうっとりとした。『生きるとはにくやの骨のうずたかし』(こうち書房 1995年)所収。


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