『面』(第114号/2012年8月1日)
西原天気
発行人・高橋龍。A5判、本文50ページ。1962年(昭和37年)=西東三鬼の歿年に創刊(休刊1984~2002年)。
本号は巻頭に山本鬼之助句集「マネキン」200句を掲載(50周年記念企画の誌上句集)。
山ざくら屋根師は遠き東より 山本鬼之助(以下同)
しばらくはキャベツの芯を噛みたまへ
夏の夜へ戸板は輿となりゆけり
春燈の影を横切るチェスの馬
若竹を振れば立派に鞭の音
蝙蝠に忍び返しの昏れ残る
大寒の射的の的の駆逐艦
千住葱を嚙めば現に兄じや人
対象や表現形式との程よい距離感から来る「粋」が随所に。
●
急逝された同人・白石不舎氏の追悼、4ページ。
雪だるま解けてゆくとき何か云ふ 白石不舎(遺作)
白石不舎 「面」作品抄より
どこからかしろいものてふてふととぶ (第100号)
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以下、同人諸氏作品より。
竹やぶの裏から素直な未来だ 田口鷹生
手扇ではらふ紫煙や三橋忌 加茂達彌
山となれ
屈める
犀の
吐息一生 上田玄
鍵穴は寒月光に瞬けり 本多和子
孑孑の未来vs姉の過去 池田澄子
肩車九月の海をみてゐたり 奥名房子
ピン札のおつりの英世風薫る 網野月を
銀漢に素足濡らして来る英霊 福田葉子
七曜は雲なきままに寒卵 小林幹彦
黙礼やすずなすずしろ苦き草 北川美美
湯ざめせぬようこの顔を落とさぬよう 渋川京子
難しき名のコーヒーも長閑なる 森多佳子
煮魚の小骨を舐り春深し 竹内弘子
白雲にぶつかるときの鶴若し 遠山陽子
別嬪が蜷局を捲いて春炬燵 山本鬼之介
蒼天を影と咲きをり花水木 黒川俊郎
夏はいつも特急列車ぎんいろの 阿部知代
春陰に匁を刻む竿秤 高橋龍
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