2012年8月6日月曜日
●月曜日の一句〔春日愚良子〕 相子智恵
相子智恵
隣まで裸の腕を垂らしゆく 春日愚良子
句集『春日愚良子句集』(2012.7 鬼灯書籍)より。
酷暑の日々が続いていて、掲句に目が留まった。
〈裸の腕〉ということは、きっと「肌脱ぎ」の状態なのだろう。上半身裸で隣家まで行ける情景からは、この場所が、隣に誰が住んでいるのかわからないような都会ではなく、地縁・血縁の深い土地柄であることが伝わってくる。隣家までの距離も近く、車通りもほとんどないのだろう。隣家に住んでいるのは気を遣わない親戚筋か、毎日会う幼なじみのような近しい関係か。
〈腕を垂らしゆく〉の描写に、暑さに参った人物の内面までもが見えてくるようだ。腕を垂らして、少し猫背気味に、強く照りつける太陽を背中に受けて歩いていくのだろう。その一瞬の孤独感の強さ。しかしその後の隣家との「暑いねえ」の挨拶に始まる交流を想像して、少しほっとするのである。
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