2022年1月14日金曜日

●金曜日の川柳〔相子智恵〕樋口由紀子



樋口由紀子






片手明るし手袋をまた失くし

相子智恵 (あいこ・ちえ) 1976~

番外編で、もちろん川柳ではなく俳句である。「月曜日の一句」担当の相子智恵さんが句集『呼応』を出版された。相子さんとは2011年から「ウラハイ」を一緒に走ってきた。読みの優しさや深さにいつも刺激をもらっている。しかし、相子さん自身の俳句をまとめて読むのは今回がはじめてである。

「また失くし」で「片手明るし」となつかしいような手つきでを引き出している。手袋をはめていない手は冬の陽が当たり、素の自分を久しぶりに見たようで気恥ずかしくもあり、眩しかったのだろう。本当によく働いてくれる感謝の手である。モノやコトをある距離感の中で詠んでいる句が多いなかで、この句は一歩詰めて心の内側を感づかせてくれる。句集全体はいわゆる体当たり的なものではなく、現代を生きる人の知的で自覚的な心情を表現している。『呼応』(2021年刊 左右社)所収。

0 件のコメント: