サマーランドまで 前篇
中嶋憲武
国分寺駅に待ち合わせて、西武国分寺線に乗り、ふたつめの「鷹の台」駅で降りる。ちょうど昼どきなので、目に付いた中華食堂へ入る。つまらないバラエティー番組をやっていた。向かい合って黙々と定食を食べる。
食堂を出て、玉川上水に沿って歩き出す。日がきらきらとして、風も心地いい。この時期の空気は風合いがよい。この間歩いたときの終点だった「玉川上水」駅を通過する。柏町、砂川町、上砂町、一番町と歩く。喉が乾く日だ。いくら歩いてもコンビニエンスストアーの類いが皆目無く、白茶けた日が注ぐ。大きな通りにぶつかり、やっと店を見つけミネラルウォーターを買って飲む。この辺はとても田舎でゴルフコースなどもある。
「ゴルフ、やったことある?」と友人に聞く。
「あるよ。なにが楽しいのかわからんね」
拝島の駅を過ぎて、国道16号線にぶつかったところで玉川上水と別れ、左に折れる。多摩川の支流がいくつもに分かれ、秋川に沿って進む。「マムシに注意」という立て札が目に付く。よほど、マムシが出没するのであろう。心中、密かに草むらから這い出しては来ないかと期待する気持ちもあったのであるが、マムシは出なかった。マムシは出なかったが、轟音がしてジェット機が飛んだ。
「ジェット最終便だね」と、ぼく。
「朱里エイコか」と、友人。
秋川は蛇行しながらのんびりと流れている。川の向こうはなだらかな丘陵で、道もだいぶ草深くなっている。モーテルなども見える。日も傾いてきて、一人ではとてもこんなところは歩けないだろう。いろいろな鳥の声がする。鶯がすぐ近くで鳴いていて、その姿も見えた。口笛のように聞こえるのは、あれは鷽だろうか。
友人は、i-podにスピーカーをつけているので、音楽を聞きながら歩いていた。ミニー・リパートンの「ラヴィン・ユー」がかかった。
「SEがなくても、自然の鳥の声で充分だね」
「そうだね」
友人は突然、スイッチを切ったのでどうしたのかと思ったら、道の先に望遠レンズを構えている人がいたのだ。近づいていくと、そのカメラマンは「雉子がいるんですよ」と言った。見ると、たしかに草むらを雉子が歩いていた。悠然と歩いている。やがて草のなかに入ってしまって、見えなくなった。
(明日に続く)
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