握れ寿司職人
中嶋憲武
暑いし御徒町なので、回転寿司に入る。
ぼくの場合、注文はしない。ぐるぐる回ってる寿司を取る。
それが俺の流儀。
なかなか繁盛してる店らしく、客がぎっしり。
まず、帆立。つぎに穴子。
カウンターのなかに寿司職人がふたり。
つぎつぎに注文が来るので、それに応えるのに必死と言ったありさま。
寿司はあまり回っていない。
マグロ、烏賊、イクラと取る。
ここでまた穴子が食いたくなったが、穴子はもう回ってない。
そこで寿司職人に穴子穴子穴子穴子握れ握れ握れとテレパシーを送る。
寿司職人は海老を握り始め、6皿ほど握ったところで回す。
回ってきた海老を食う。
穴子穴子穴子穴子握れ握れ握れ旅立て女房女房女房。
寿司職人は、甘海老を握り始め、やがてそれを回す。
隣の太った若いアベックの男が、サーモンのマリネさび抜きでと注文。
まあいい。
サーモンのマリネを余分に握って、ベルトコンベヤーに乗せる。
回ってきたサーモンのマリネにはマヨネーズがかかっている。気持ち悪い。
太ったアベックの男は、美味い美味いと言い、太った女に同意を求めている。
俺は、穴子穴子穴子握れ握れ握れ寿司職人旅立て女房女房女房。
と際限なくテレパシーを送る。
太ったアベックの男は、まぐろさび抜きでと注文。
さびが入ってんのが寿司だろうが。
穴子穴子穴子穴子握れ握れ握れ。
寿司職人は生海老を握り始めた。
俺は回ってきたそれを食う。
10皿食ったところで退散。今夜は穴子で締められなかった。うなぎでもよかったんだけど。甘いたれがかかってるやつが食いたかったのだ。
なにかこうマンゴーのアイスが食いたくなり、ファミリーマートへ入る。
マンゴーのアイスはなくて、すいかバーがあった。
すいかバー西瓜無果汁種はチョコ(榮猿丸)
という句を思い出す。そこで俺は天の神様の言う通り、グリコのパリットとか言う、期間限定の、コーヒークリームとチョコクリームが螺旋状に混じり合ってるアイスを買った。これが意外に美味く、次に目についたローソンでもう一個買った。
漱石の坊ちゃんのなかでふらりと入った蕎麦屋の天麩羅蕎麦が意外に美味かったので、七杯お代わりした旨書かれてあるが、パリッテ七個は無理。だって気持ち悪くなってしまうだろうから。
夏の夜風に吹かれて自転車を漕ぎ続けた。
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