2011年12月16日金曜日
●金曜日の川柳 樋口由紀子
樋口由紀子
子がみんな寝てからリンゴ妻が出す
定金冬二 (さだがね・ふゆじ) 1914~1999
中村草田男の有名な俳句に〈空は大初の青さ妻より林檎受く〉がある。どちらの句も終戦後の食料の乏しい時代に作られた。そのような時代に生かされている感慨が妻からの林檎に象徴されている。しかし、両者の林檎の立ち位置は微妙に異なる。冬二の川柳には生活が見える。挫折感、屈折感があり、庶民の哀歓がひしひしと伝わる。
〈人づまと10歩歩けば10歩の罪〉〈100挺のヴァイオリンには負けられぬ〉〈にんげんのことばで折れている芒〉〈一老人 交尾の姿勢ならできる〉リフレインや数字を効果的に使い、句会、大会などでは抜群の上手さを見せ、いわゆる冬二調と言われる川柳を作り上げた。『無双』(昭和59年刊)
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