2018年7月26日木曜日

●木曜日の談林〔松尾芭蕉〕黒岩徳将



黒岩徳将








わすれ草菜飯につまん年の暮 芭蕉
 

『江戸蛇之鮓』より。延宝六年作。「わすれ草」は甘草のことで、薬性が人の憂いを払うとされる。句意はなんてことはなくて、わすれ草を摘んで菜飯にして、年の憂さを忘れてしまおうということだ。「わすれ」の連想だけど句を捉えると、あまり面白さも見いだせない。『芭蕉全句集』(角川ソフィア文庫)には、京の千春・信徳を迎えた三吟歌仙の立句とある。気になるのは、角川ソフィア文庫には「菜飯」に「なめし」と振り仮名が振っているのに対し、桜風社のものには「なはん」とあり、注には、『芭蕉盥』に「ナハン」の振り仮名がある。とある。

ナハン、の方があっけらかんとして、一年を忘れられそうな気がする。

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