2012年2月13日月曜日

●月曜日の一句〔田島健一〕 相子智恵


相子智恵








昏睡のあおき正午や雲雀降る  田島健一

電子句集『式服の食事』(2012.1.14/オフィス・タジマ)より。

雲雀といえば「揚雲雀」というくらい、鳴きながら空に舞い上がる姿が印象的な鳥だ。

だが、急降下もするのである。「落雲雀」という季語があるが、ここでは〈雲雀降る〉という言葉の選び方が美しく、心に残った。

〈昏睡のあおき正午〉もうっとりと美しい。〈雲雀降る〉とあいまって、真上に太陽がある春昼の青空のイメージがオーバーラップしてくる。

深い眠りの中の真っ青な世界に、自分という存在はすっかり融けてしまって、落ちてくる雲雀たちとは逆に、太陽に向かって浮き上がってゆく気体にでもなった気分だ。雲雀の声は天上の音楽のよう。たくさんの雲雀が降り、声も降ってくる。

死を悼む美しい挽歌、あるいは快楽の極みのようにも思える一句である。



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