2008年7月30日水曜日

神輿のミコちゃん

御輿のミコちゃん中嶋憲武



職場の町内会の例大祭なので、仕事が早めに終る。仕事場の清掃を済ませて、流しで湯のみを洗っていると、帰り仕度をしていたスズキさんが、「神輿、担ぐんだって? ナカジマくんの真価が問われるね」と言うので、「シンカーですか? 勝負に行くなら、シンカーよりシュートを使います」と答えると、スズキさんは「いや、真価でも廊下でもいいけど」と言って笑ったので、俺も笑った。

祭衣(すなわちダボシャツ、半タコ、足袋、半纏、これに帯を巻く。帯は自分では巻けないので、社長が巻いてくれた。帯を巻くと心なしか、気分が引き締まり、背筋もぴんと伸びたような心持ちがした)に着替えて、18時に所定の場所へ行くと、すでにそこには、江戸の男女が祭衣で集っていた。いやがうえにも高まる江戸気分。三社の神輿を担ぐのではなくて、松が谷三丁目町会の神輿を担ぐのであるが、「三」で繋がっているし、三丁目の夕日とも連想出来るのでオッケー。

三丁目の夕日を浴びて、神輿が威勢よく挙がる。神輿を担ぐのは天保六年以来のことなので、担ぎ方はあらかた忘れていたが、担いでいるうちにだんだん思い出してきた。社長の言う通り、若い女性が俺の前の寸分の隙間もないようなところへ割って入ってくるので、自然に密着。とてもいい。

\(^0^)/

その時の心持ちを表すとすると、上のような顔文字に落ち着くであろうか。心持ちは、拍手喝采のような感じなのだが、顔つきは威勢のいい江戸の人を装っている。それにしても、女の人の祭髪といいますか、きりっと後ろで束ねた髪はいいですね。どんな女性でも美人になってしまう。今度生まれ変わったら、絶対女の人に生れてみたいと思う瞬間でした。

彼女らを見ていると、ワンクールの連続ドラマ「神輿のミコちゃん」という番組があってもいいような気がしてくる。舞台は下町、16歳の少女がいて、食事もすれば、散歩もする、恋もするといったような態のドラマで、最後はかならず神輿をかつぐショット。神輿をかつぐ群衆の俯瞰のショットから少女のバストショット。笑顔で神輿かつぐアップへ。そして字幕。「苦しくたって 悲しくたって 神輿をかつぐ 神輿は世界 世界はわたし それがわたしであることなのだから それでいいじゃない」というような。

ところどころで休むたびに、居酒屋さんの前ではその店の提供の焼き鳥や焼酎やウーロン茶、牛乳屋さんの前ではヨーグルト、コンビニエンスストアーの前ではクロワッサンや缶ビールと、なにやら供されるので、これもまた神輿を担ぐ楽しみのひとつかと合点。

掛け声はさまざまで、「えっさーえっさー」やら「えいえい」やら「さー」やら神輿初心者の自分としては単純に「わっしょい」と思っていたのであるが、誰も「わっしょい」なんて言ってる人は無く、その時の気分で廻りの人になんとなく合わせてみた。休憩地点では馬を置いて、その上に神輿を置くのであるが、このとき、みんなでいっせいに拳をつきだして振るというような仕草は、なんだか江戸っぽくなく、むしろラテン的と言ってもいいような仕草なので、正しい神輿の掛け声と振る舞いについて調べてみたくなった次第。そんなもの無いのであろうか。

祭は明日もつづく。

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