かしつぼ
金曜日の朝
中嶋憲武
かしつぼ=歌詞のツボ
詞:安井かずみ
曲:吉田拓郎
編曲:柳田ヒロ
トロリトロトロ 眼がさめる
霧もはれてた 赤い屋根
チェックの カーテンごしに
(チェックの 陽ざしが)
僕の足を くすぐる
だけど今でも 気にかかる
君は突然 出ていった
旅でみつけた 運動ぐつ
はきなれた あの白いくつ
つっかけて 消えたまま
背中まるめて 歩くたび
僕がうろつく この街は
何故かパリーに 似ている
(やさしい女の)
ため息なんか 聞きたい
だけど今でも 気にかかる
君はセーター 肩にかけ
かかとつぶした 運動ぐつ
夏を歩いた 白いくつ
恋といっしょに 消えたまま
洗いざらしの ブルージーン
残ったお金が あと少し
気にするほどの わるい事
(ないなら土曜日)
バラでも買って 帰ろう
だけど今でも 気にかかる
君と映画を 見た帰り
小雨にぬれた 運動ぐつ
赤いドアに 脱ぎすてた
いつのまにやら 消えたまま
ちょっと恥ずかしいんですが、よしだたくろうを聴いていた時期があります。この「金曜日の朝」は数多くのたくろうの楽曲のなかでも、垢抜けしているという点で、ちょっと毛色の変わったものであると思います。アレンジはフォークロック調。女性コーラスが印象的です。
作詞は、加藤和彦の亡妻である安井かずみで、色彩の使い方がとてもうまいなあと中学生の頃思ったもんでした。冒頭、赤い屋根と出てくることによって、チェック模様もなんとなく赤やオレンジや黄色の混じった暖色系を想像します。第1節の基調色は赤、そこへぽつんと運動ぐつの白が出て来て、印象を高めるのに効果を発揮します。
第2節の基調色は、背中まるめて歩くとあることによって、なんとなくグレーを想像しました。第3節は、ブルージーンの青ですね。どの節にも彼女の履いていた運動ぐつの白が際立っています。
この詞を眺めていると、1973年から74年くらいの空気やら匂いやら風俗(セックス産業ではなくて、文字通りの風俗)やらが浮かんでくるのです。同時期にTBSラジオで22時くらいにやっていた「エミコの長いつきあい」という短い番組を思い出したりして。まだ当時はスニーカーとは言わず運動ぐつと言っていたのですね。しかしながらジーパンではなくてブルージーンと書いているあたりは、さすが安井かずみ。
背中まるめてあるくたび 僕がうろつくこの街は 何故かパリーに似ているという箇所が好きで、中学生のころ埼玉県春日部市に住んでいたのですが、西口のイトーヨーカ堂あたりをぶらついていたり、東口の名曲堂あたりをぶらついているとき、よくこの歌詞を口ずさんでは、「パリだ、パリ」とひとり悦に入ってたものです。
土曜日にバラを買って帰るだなんて、まだこの頃は週休二日制が導入されてなかったのだなあとしみじみします。
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1 件のコメント:
>ちょっと恥ずかしいんですが、よしだたくろうを聴いていた時期があります。
誰にも恥ずかしい過去があります(どこかで言った気が…)。
これにぴったりの文句が、いま読んでいる『イケナイ宇宙学』(フィリップ・プレイト)という本(激オモ)に出てきました。曰く、「15歳のころ好きだった音楽の責任は負いかねる」。
安井かずみの歌詞、いいですね。曲の終わりの口笛も気に入りました。青春ざんす。
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