2009年4月27日月曜日

〔俳誌拝読〕「狼」第30号

〔俳誌拝読〕
 RO 
第30号(2009年2月1日発行)74頁



発行所は石川県能美郡。同人10氏は、石川、福井、富山、滋賀、京都等の府県在住。

第30号は記念号。同人作品、ひとり4頁50句以上ずつが掲載されている。

  眼裏で転がっている松ボックリ  阿木よう子

  少年の器はキャベツくすぐったい  油本麻容子

  梅林や静かな死などありませぬ  岩田青崖(物故)

  ドロップ缶冬の電車の音がする  大沢輝一

  金環食そして青年団滅ぶ  岡村知昭

  カステラやこの世の外に届きけり  鯉口 賢

  桑の実の摘みごろでした弟は病み  小池弘子

  古時計ぼろんと海が剥落す  佐孝石画

  石になる海鼠ころんと石になる 舘百合子

  蛇の衣遊覧船は出たばかり  関戸美智子

  月やさし鉛筆の芯くらい  中内亮玄

全体として「反・伝統的」な句、いわゆるチャレンジングな句、さらに思い切っていえば「前衛」の系譜にある句が多いが、ソレ系で統一された同人でもないようで、比較的伝統的な句も少なくない(おもに女流陣)。

同人作品全体にキマジメさを感じた。良い意味でも悪い意味でも俳句がマジメという意味(これは、現代川柳を読んだときの感想に近い。個人的なもので、あまり意味はない)。

なお、個人的趣向でいえば、中内亮玄氏のライトヴァース的な味わいの数句、岡村知昭氏の一種政治的なモチーフを果敢に「俗」化するようなアプローチを、興味深く読ませていただいた。

  新品のテナーサックスの形でキス  中内亮玄

  檀ふみに連れられて戦艦大和  岡村知昭

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巻の後半には、記念号らしく、バックナンバーで試みられた「実験室」の抄録を収める(この「実験室」については、「豈」47号(2008年11月)に岡村知昭氏の一文「『実験』の必要性』に言及がある)。「最短詩型への跳躍」と銘打った短い自由律の試作が興味深い。最終的には「五音」に行き着いた模様。

  遠いなあ  小池弘子

奇しくも以前、個人ブログで開催したのが「二一二句会」。
第1回 http://sky.ap.teacup.com/tenki/362.html
第2回 http://sky.ap.teacup.com/tenki/515.html

五音をもって、詩へと向かうのか、俳諧へと向かうのか、そこにやはり違いはあるようだが、おもしろい試みだと思う。


(さいばら天気)


1 件のコメント:

HaikuWeekly さんのコメント...

同誌について小野裕三さんの記事があります。
こちら