〔今週号の表紙〕第228号 蕣(あさがお)
常盤優
二年前の夏休み初っ端、総ての仕事をなげうって屋久島へ出かけました。
子どものころからずっと待ち続けていた、国内で見られる皆既日蝕を観測するために。
でも、皆既帯に入る僅かな時間を狙ったように無常の雨雲が上空を蔽ってしまったのです。
辺りは静かな闇に包まれ、不思議な風が流れ、鳥たちが啼いているのをただ聞き入っていました。
隠された光球から大空に放散するコロナは、とうとう見ることができませんでした。
暑い暑い夏から少し涼しさを感じられるようになってくる頃、元気に咲き始めるあさがお。
「蕣」の草冠を取ると「舜」。中国の古代神話の太陽神なのだそうです。
こぼれ種から咲き始めたあさがおの、そのなかに夢に見たコロナがありました。
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