2011年9月30日金曜日

●金曜日の川柳 樋口由紀子


樋口由紀子
  







オルガンとすすきになって殴りあう


石部明 (いしべ・あきら) 1939~

オルガンとすすきなら勝負にならないだろうとまず思った。オルガンとオルガンならどちらかが壊れるだろうし、すすきとすすきでは無残になる。

「オルガン」も「すすき」も比喩として私は読まない。矛盾するかもしれないが、「になって」だからである。もちろん、人はオルガンにもすすきにもなれない。殴りあってもどうしようもないことは最初からわかっている。しかし、オルガンとすすきになって殴りあうしか術がないのだ。とても哀しく、とても切ない。

靴屋きてわが体内に棲むという〉〈からっぽの身体畳んで鳥の真似〉〈老人がフランス映画に消えてゆく〉 石部明は川柳の新たな世界を切り拓いてきた第一人者である。『遊魔系』(2002年 詩遊社刊)所収。

2 件のコメント:

ハラル小林 さんのコメント...

樋口さん。こんにちは。吉増さんの会でとなりあった小林です。迷い子どうしのありさまをなつかしんでいます。
杉浦(従妹)から届いていた『川柳の森2000年版』集中の「一方通行の道路」拝見しています。

てのひらに桃を沈めて父を絶つ

ほか印象ふかく、くちずさみになりそうです。

樋口由紀子 さんのコメント...

小林さん。
吉増剛造さんは素敵でしたね。
その節はお世話になりました。おかげさまで楽しいお酒でした。
道に迷わずにちゃんと帰ることが出来ました。

『川柳の森2000年版』なつかしい~~。