2012年1月13日金曜日
●金曜日の川柳 樋口由紀子
樋口由紀子
恋せよとうす桃色の花が咲く
岸本水府 (きしもと・すいふ) 1892~1965
恋するのは佳きことである。この川柳は水府19歳のときの作である。「うす桃色の花が咲く」なんて、なんと余裕があって、大人びて、おおらかであろうか。
岸本水府は日本最大の結社「番傘」を築いた。〈人間のまん中辺に帯を締め〉〈電柱は都につづくなつかしさ〉〈ぬぎすててうちが一番よいといふ〉。どの句も決していやな気分にさせないでじっくりと味わわせる。川柳の立ち姿、有り様を見せている。
水府の作風は肯定的な人生観に基づいているように思う。本当にそう思っていたのかどうかはかなり疑問だが、その方が生きやすく、この世をうまく通過していくコツであると言っているような気がする。
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