2012年1月20日金曜日
●金曜日の川柳〔大山竹二〕 樋口由紀子
樋口由紀子
五十より歳をとらねば五十良し
大山竹二 (おおやま・たけじ) 1908~1962
このリズムがなんともいい。五十というのは人生の一番面白味のわかる年齢なのかもしれない。しかし、竹二の場合は事情が異なる。竹二は肺結核のために長く療養生活をしていたので、人一倍に、想像以上に生を意識して、死を見据えていたはずである。竹二にとっての五十は複雑で切実な年齢だったのだろう。
実は私は竹二のことは知らないで、この川柳が好きだった。五十よりずっと若い頃に、偶然にこの句を目にして、歳をとるのもいいものだと呑気に鑑賞していた。後に作者が病気だと知って、ちょっと複雑な気分になった。
大山竹二で有名な句は〈門標に竹二としるすいのちかな〉であるが、私は〈花火黄に空の重心全く西〉〈明快に冷えて全くメロンたり〉など作者の事情を考慮しなくても味わえる句の方が好きである。大山竹二は昭和37年に53歳で亡くなった。『川柳 大山竹二句集』(竹二句集刊行会・昭和39年刊)所収。
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