〔俳誌拝読〕
狼 RO
第30号(2009年2月1日発行)74頁
発行所は石川県能美郡。同人10氏は、石川、福井、富山、滋賀、京都等の府県在住。
第30号は記念号。同人作品、ひとり4頁50句以上ずつが掲載されている。
眼裏で転がっている松ボックリ 阿木よう子
少年の器はキャベツくすぐったい 油本麻容子
梅林や静かな死などありませぬ 岩田青崖(物故)
ドロップ缶冬の電車の音がする 大沢輝一
金環食そして青年団滅ぶ 岡村知昭
カステラやこの世の外に届きけり 鯉口 賢
桑の実の摘みごろでした弟は病み 小池弘子
古時計ぼろんと海が剥落す 佐孝石画
石になる海鼠ころんと石になる 舘百合子
蛇の衣遊覧船は出たばかり 関戸美智子
月やさし鉛筆の芯くらい 中内亮玄
全体として「反・伝統的」な句、いわゆるチャレンジングな句、さらに思い切っていえば「前衛」の系譜にある句が多いが、ソレ系で統一された同人でもないようで、比較的伝統的な句も少なくない(おもに女流陣)。
同人作品全体にキマジメさを感じた。良い意味でも悪い意味でも俳句がマジメという意味(これは、現代川柳を読んだときの感想に近い。個人的なもので、あまり意味はない)。
なお、個人的趣向でいえば、中内亮玄氏のライトヴァース的な味わいの数句、岡村知昭氏の一種政治的なモチーフを果敢に「俗」化するようなアプローチを、興味深く読ませていただいた。
新品のテナーサックスの形でキス 中内亮玄
檀ふみに連れられて戦艦大和 岡村知昭
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巻の後半には、記念号らしく、バックナンバーで試みられた「実験室」の抄録を収める(この「実験室」については、「豈」47号(2008年11月)に岡村知昭氏の一文「『実験』の必要性』に言及がある)。「最短詩型への跳躍」と銘打った短い自由律の試作が興味深い。最終的には「五音」に行き着いた模様。
遠いなあ 小池弘子
奇しくも以前、個人ブログで開催したのが「二一二句会」。
第1回 http://sky.ap.teacup.com/tenki/362.html
第2回 http://sky.ap.teacup.com/tenki/515.html
五音をもって、詩へと向かうのか、俳諧へと向かうのか、そこにやはり違いはあるようだが、おもしろい試みだと思う。
(さいばら天気)
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2009年4月27日月曜日
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同誌について小野裕三さんの記事があります。
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