2009年4月3日金曜日
●おんつぼ18 泉谷しげる 山田露結
おんつぼ18
泉谷しげる
山田露結
私が二十歳くらいの頃だったと思う。
ちょうどレコードからCDに変わる時期だった。
針飛びがなく音質も良いというのが売りのCDだったが、レコードの大きな紙ジャケットに比べてCDのコンパクトなプラスティック・ケースは味気なく、物足りないものだと感じていた(実際、CDにも音飛びはあるし、音質は間違いなくレコードのほうが良いと今でも思っている)。
それで、しばらくは「レコード派」を通すつもりでいたのが、あれよあれよという間に日本中のレコード店からレコードが消え一気にCDに変わってしまった。
しかたなく、CDプレイヤーを買わざるを得なくなってしまったのである。
テレビドラマやバラエティー番組でときどき見かける泉谷しげるという小汚いオッサンが歌手だということは知っていた。「春夏秋冬」というヒット曲があることも知っていた。
いや、実は泉谷しげるファンの友人宅でその頃発売された「IZUMIYA - SELF COVERS」という泉谷自身の過去の曲をカーバーしたアルバムを何度か聴かされていたのである。そこで聴いた「春夏秋冬」は当時の一流ミュージシャン達によるロックアレンジが施されていた(ギターはモロ「U2」だった)。
なんだこりゃ。
友人はカッコイイと絶賛していたが私には何だかとても軽薄な音に聴こえた。
そんなわけで、泉谷しげるをわざわざ自分でお金を払って聴こうとまでは思わなかったのである。
ある日、とある大型電気店でとうとうCDプレイヤーを買った。なんとなく軽蔑していたCDではあるが、プレイヤーを手に入れてみれば早く何か聴いてみたいとワクワクするものである。電気店の帰りに同じビルにあるCDショップを覗いてみた。
さて、何を買おうか。
あれこれと見まわしているうちになぜか目に止まったのが泉谷しげるだった。ちょうど、初期のレコードの何枚かがCDになって廉価で再発売されていたのである。
「泉谷しげる登場」。デビューとなったライブ盤である。どうしてそのCDを買おうと決めたのか今でははっきりと覚えていないが、とにかく急いでアパートへ帰ってすぐに聴いてみた。
一曲目、「白雪姫の毒リンゴ」。
むなしいむなしいとつぶやいても また明日もむなしいだけ
空に浮かんでる白い雲も 今ではなにもこたえてくれない
鳥肌が立った。友人宅で聴いたあの軽薄な「IZUMIYA」じゃない。ギター一本で切々と歌うフォーク歌手「泉谷しげる」だった。
しばらくは毎日毎日そのCDを聴いていた(今はホントになくなりました、こういうこと)。その後、そのデビュー盤から順番に泉谷のCDを全部買い揃えることとなった。いつのまにか泉谷の魅力に完全に嵌ってしまったのである。
そして、気が付くと友人とフォーク・ユニットを組んで路上やライブハウスで「白雪姫の毒リンゴ」を歌っている私がいた。
青春度 ★★★★★
長髪の泉谷に苦笑度 ★★★★★
おすすめアルバム 泉谷しげる登場
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4 件のコメント:
「白雪姫の毒りんご」は門谷憲二の作詞作曲で泉谷の歌ではありませんが、「おお 僕たちに今一番必要なものは 熱い恋や夢でなく まぶしい空から降ってくる 白雪姫の毒リンゴ」のフレーズは今聞いても痺れますね。
デビューした時からずっと上田正樹と一緒に、バラードでも吠えるところと、歌の緩急(「白雪姫の毒リンゴ」の「リンゴ」を軽く抜くように歌うところとか)が好きでした。
ベストは今でも『オールナイト・ライブ』。全曲素晴らしい。確か池袋の文芸座の地下でBANANAと一緒にやったやつ。わたくしが持っている泉谷はすべてLPです。
CDになってからは、聞いていません。
コメントありがとうございます。
たしかに、「白雪姫の毒りんご」の作詞作曲は泉谷ではありませんが、いつまでも泉谷の「歌」として私を痺れさせてくれます。
私のフェイバリットアルバムは「家族」。
有山淳司、吉田拓郎などのゲストもいい味出してます。
>実際、CDにも音飛びはあるし、音質は間違いなくレコードのほうが良いと今でも思っている)
おまけに、寿命はCDのほうが短いようです。
一過性の媒体だったのかも。
今は音楽の聞き方もいろいろですからね。
手軽に聞きたい曲が聞けるのは良いことだと思いますが、レコードもCDもいろいろある聞き方の中のひとつとして残っていけばと思います。
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